銘柄分析:ボーイング
BA銘柄分析】ボーイングは世界最大の航空機メーカーでNYダウ採用銘柄
※2017年12月期決算データ反映、BSデータ追加、コメント刷新(2018/4/23)
S&P100構成銘柄を中心に米国企業の業績、財政状態、キャッシュフロー、株主還元状況について過去10年分のデータをグラフ化しています。
データソースはMorningstarです。
今回はボーイング(BA)をご紹介します。
BA財務情報
基本情報
会社名 | ボーイング |
ティッカー | BA |
創業 | 1934年 |
上場 | 1934年 |
決算 | 12月 |
本社所在地 | イリノイ州 |
従業員数 | 140,800 |
セクター | 資本財・サービス |
S&P格付 | A |
監査法人 | Deloitte |
ダウ30 | ○ |
S&P100 | ○ |
S&P500 | ○ |
ナスダック100 | × |
ラッセル1000 | ○ |
地域別売上構成比
セグメント別売上構成比
業績
キャッシュフロー
バランスシート
資産
負債純資産
株主還元
この記事を読むともっとこのグラフを理解できます
連続増配年数
6年
バリュエーション指標等(2018/4/23時点)
PER:25.2倍 最新情報はこちら
配当性向:49% 最新情報はこちら
感想
ボーイングは欧州エアバス社と世界市場を2分する世界最大の航空機メーカーです。 1997年にマクドネル・ダグラス社を買収し米国唯一の航空機メーカーとなりました。NYダウ30銘柄にも選ばれる米国を代表する企業の一つです。
民間航空機、軍用機、宇宙システム(宇宙船や関連機器など)、ミサイル防衛、アフターサービスといった事業分野を持っています。売上高の7割近くは民間航空機事業がもたらしています。一般的に軍用機より民間航空機の方が利益率が高いと言われます。ボーイングは今後も民間航空機に力を入れる方針です。
航空機ビジネスは景気の影響を受けやすいです。商業用航空機の需要は貨物量に左右されますが、それは結局各国の経済成長率や政治動向に依存します。また、スムーズな航空機融資が行われる金融環境、国家間の関係の良し悪し、燃料価格、テロの頻度などにも影響を受けます。
そんな航空機ビジネスを展開するボーイングは景気循環銘柄と言えますが、2017年は絶好調でした。世界的に景気拡大が続いており、商用民用ともに航空機需要が伸びるという期待感と好業績から株価はグングン伸びていきました。2017年初150ドル付近だった株価は年末には約2倍の290ドルまで上昇し、2017年のNYダウ上昇にもっとも貢献しました。資本財セクターと言えばかつてはゼネラル・エレクトリック(GE)が時価総額トップでしたが、今はボーイングが追い抜きました。
航空機本体の受注状況が重要なのは言うまでもありませんが、アフターサービスマーケットも重要です。航空機ビジネスは景気に左右されがちと言いましたが、部品交換や機体メンテナンスといったアフターサービスは、景気に左右されず継続的にキャッシュをもたらしてくれます。アフターサービス部門の売上高は現在140億ドルほどですが、今後10年以内に500億ドル規模まで拡大させる計画です。
過去の財務データを見てみましょう。
売上高は2010年度を底に回復基調です。景気に左右されやすい航空機ビジネスですが売上高は安定しています。ボーイングは機器納入時ではなく、製造進捗に伴って徐々に売上計上していると考えられます。航空会社に機器を納入して代金をもらうより前に、前倒しで売上計上することが特別に認められています。なので会計上の売上高は受注の浮き沈みに比べて安定しています。
FY17は業績好調でしたが売上高は微減で終わりました。売上減にもかかわらず大幅増益を達成できたのは、コスト削減によるものです。粗利率は4%も改善しています。ただし、年金関連の特別利益が約13億ドル発生して純利益を押し上げていることには留意しましょう。GAAPベースのEPSは13.4ドルですが、調整後EPSは12.0ドルです。
ROEがFY17にカクンと下がっていますが、純資産がゼロ付近まで減少しているからです。ボーイングは実は債務超過寸前の状態です。業績は良いのに純資産はマイナスに転落しそうです。なぜかと言えば、莫大な株主還元を行っているからです。米国優良企業には積極的な株主還元のために純資産が小さくなっている、ないしマイナスの企業が結構あります。
キャッシュフローは安定していますが、売上高に比べるとやや波があります。FY08に至っては営業CF、フリーCFともにマイナスとなっています。上述の通り、航空機メーカーの会計処理は特殊なので、会計上の利益とキャッシュが不一致になりがちです。きちんとキャッシュを見ることがより重要な業種と言えます。FY08を除けば、営業CFもフリーCFをしっかりプラスを維持しており業績は安定しています。
バランスシートを見てましょう。特徴的なBSです。先ず目立つは流動資産の比率が71%と大きいことです。大抵の企業は固定資産の方が大きくなりがちですが、ボーイングは流動資産の方が大きいです。何でしょうか?、ボーイングが持っている高額な流動資産と言えば、、そう在庫です。製造途中で納入前の航空機が棚卸資産としてバランスシートに計上されています。ボーイング777など大型航空機を1機製造するのには約1年掛かると言われます。
それと、上述しましたが純資産がほぼゼロで、自己資本比率は0.4%となっています。債務超過寸前です。過去5年間の総還元額(配当+自社株買い)は440億ドルで、フリーキャッシュフローの金額390億ドルを超えています。積極的な株主還元によって純資産は削られました。業績悪化によって純資産が減っているわけではないので心配無用。
配当(DPS)は直近5年間で約3倍と大きく伸びました。目立つのはFY13から右肩上がりのグレーの線です。総還元性向が伸びていますが、これは積極的な自社株買いの影響です。このFY13からの5年間で318億ドルもの自社株を買い戻しました。この自社株買いもボーイングの株価急伸に一役買っています。こんだけ自社株買いしてたらそりゃ純資産にも穴が空いちゃうわけです。景気に左右されがちなビジネスにもかかわらず、ここまで多額の資金を株主に還元できるのは、今後のビジネスに対する経営陣の自信の表れですかね。