若きウェルテルの悩み
寅蔵です🐯
私は未熟な投資家。
衝動買いをしてしまうことが多々ある。つい最近は、コストコが買いたいという衝動に駆られている。
如何ともしがたいこの欲情した熱を冷ますためには、チャートをみるしかないと思った。
このチャードだけから判断すると、「」早めに買っておけば今頃、〇〇だったのに、ということを考える人が多いと思う。私もその中の一人であるが・・・。
過去から学ぶことはとても大切だが、このチャートを見て、これからずっと右肩上がりに増えるだろう、と予測するのは気をつけなければならない。
2008年リーマンショック後、アメリカや中国そして日本での速やかな経済政策の甲斐もあって、100年に一度の大暴落の後でも、アメリカでは10年にも及ぶ景気拡大期を迎えることができた。
しかし、うまい話というのは世の中に存在せず、景気についても同様だ。一見、良いようにみえる景気の後には、その反動が必ず来る。バブルは起こるべくして起こるのだ。
2019年前に大きく暴落しているのは、ちょうどクリスマスイブの日であることが以下のチャートからわかる。
このときは、12月4日に、長期と短期の国際の利回りが逆転する逆イールドによって、大きく市場が不安に傾いたことや、景気拡大が10年も続いていること、米中貿易摩擦に加えて、FRBによる利上げは継続して起こるだろうという予測のもと、市場は明るい見通しはないだろうという不安から、大きく下がった。
その意味で、企業活動における下落ということではないので、買い時のチャンスだったとも言える。
かねてより、消費財セクターが少ないワンタップバイにおいて、私が唯一保有していないのが、コストコだ。参考までにだが、バフェット太郎さんの黄金銘柄にも含まれていない。おそらく配当が高くないことがその理由かもしれないが、実際のところはわからない。
ワンタップバイではニュースや騰落率ランキングなどがちょいちょい送られてくるが、あまり当てになった試しはない。
しかし、そこでコストコと-2.03%と、アマゾンの−5.38%についで、落ちていることを見ると、抑圧していたリビドーが再び暴れ出し、右腕に宿った祟り神の呪いのごとく私を苦しめる。
「買っちゃえよ、必ず上がるぜヒヒヒ」
という悪魔の囁きと、
「これから長い景気後退期が訪れます。今は買うときではありません」
という天使のお告げが、私の頭上で怒号を飛ばし合う。
ワンタップバイの米国株では、取引時間が23〜5時までのみ手数料が0.5%だが、それ以外の時間だと少し割り増しで0.75%となっている。
実はこのことに気づかない時期が長かったので、個別株の成績に多少なりとも影を落としている。
こういう事情もあって、私は23時頃になると投資家の血が騒ぎ出して、アプリを起動してしまうのだ。
それまでにこの衝動を抑えきれるかどうかにかかっている。
「長く保有すればきっと上がりますよ」なんていう考えが頭をちらつく。
投資家は、決まった戦略を決定しないと、こういう考えに惑わされ続ける。そしてそれを楽しむようになる。
身を滅ぼす投資家の多くに見られる兆候だ。
たまたま視界の中に君がいただけで、俺はあいつなんか好きじゃない。
などと自分の心を偽ってみても、自分の心が苦しいだけだ。
痛い目を見ない限り、人は学ぶことはできない。
すでにGMでそのことを学んだはずだろう?
そしてお前はコストコだけじゃなく、GEにも惹かれているんだろう?
未熟な奴め。
そうやって自分をなじる日々が幾日か続く。
ふと、早朝の晴れやかな庭先で植木に水をあげている時に、ふと閃いた。
「折衷案として、積み株で保有してみたらどうかねえ👼」
なるほど。
私の積み株では、毎月1万円と言いながら、11銘柄あって、実は1万1000円投資していた。
例えばここにコストコを加えたとする。すると1万2000円になる。これは良くない。
あまり参考にならないかもしれないが、12ある銘柄のうち、10選んで1万円投資する。除外する銘柄は、もっともプラスになっている銘柄とする。
これなら、毎月1万円の標語に偽りもない。少し読者からするとわかりにくいかもしれないし、困るとすれば、近い将来、私が大ブレイクして、出版社から「先生、ぜひ本を書いてください!」と土下座して頼まれた時に、この投資戦略を説明して編集者に苦い顔をされるくらいだ。
心が決まった。
よし、これでいこう。とても爽快な気分だ。
早速、始めよう。
しかし、気がかりがもう一つ気がかりがある。
実は、禁断の銘柄GEが気になっているのだ。
買ってはいけないと思いつつ、よく知らないくせに、という思いもある。
「だったらまずは1000円で様子見でしょ。それが読者のためにもなるんじゃない?」
というもっともらしい言葉が不忍池のボウフラのように湧いては朽ちていく。
「チャートを見るだけならば」という弱い心が走り出した。
娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
たけき者もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ
私はGEについてあまり詳しく知らないが、巨大すぎる企業というのは、互いに補完し合うよりも、自分たちの穴を誰かが埋めてくれるだろうという甘えの構造を取ってしまうのだろうか。
かつてIBMが社外の顧客でなく、社内の上役にばかり目を向けていたように、今こそ生まれ変わる時なのではないだろうか。
まだまだチャートだけみても、上向きになる気配はない。
このまま下がっていってもう紙くず同然にまで下がった時に、本当の自分に開眼するのではなかろうか?
ワンタップバイでは、企業のアイコンの隣に、CEOの顔が並べられている。
ボーイングが上がらない時期には、デニースに怒りを覚えたものだ。
でも大きな信頼を寄せるエクソンのダレンウッズの自信に満ちた顔を見ていると、どこか安心でき、むしろ下がることを願う。
そうすると、そのすぐ下にいるコストコが無視できなくなるのだ。
クレイグ・ジェラインクスという名の気のいいおっちゃんが、
「なぜ買わんと? はよ買いや!」
と博多弁とも関西弁とも判断がつかない不思議な言葉で語りかけてくるのだ。
それに便乗して、そのすぐ下のGEのラリー・カルプがやせ我慢しているように見えてならず、同情心を煽り続ける。
しかし、GMのメアリー・バッラが一向にプラスのそぶりを見せないため、私は平常心に戻ることができるのだ。ちょっとだけ手を出したタイミングが悪かったのか、銘柄が悪かったのか、それともそういうブレブレの戦略が資産の最大化を防いでいるのか。
あの時、悪かったのは俺だけだったのか?
投資は、本来は資産家による事業化の支援である側面もある。
私はソフトバンクの孫さんを尊敬している。だから、彼のことを応援したいと思っており、そのためだけに投資してもいい気がしている。
だが、実際にはしていないし、携帯も一度たりともソフトバンクにしたことがない。
でも、してもいいかなとは思う。
GEは、歴史を紐解けば、名門中の名門であり、誰が今のような姿を想像できただろうか?
文字通り、地べたからの復活を願って、応援する意味で、小銭をお賽銭のように投資するのもまた投資家の逃れられない業だろう。
未熟な投資家は今日も思い悩む。